民泊

事務所だより~民泊の課税関係の概要~

公開日: 2018/6/20 / 更新日: 2026/10/31

国税庁は、平成30年6月13日、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊で生じる所得について、所得区分や必要経費などの税務上の取扱いをまとめた資料を公表しました。

この資料では、自己が居住する住宅を利用する民泊の所得は原則として雑所得に区分されることや、一定の場合には事業所得・不動産所得に該当することなどが示されています。

本記事では、この国税庁資料を基本とし、その後の法令・通達の改正も踏まえ、主に住宅宿泊事業法に基づく民泊の所得税・消費税の取扱いを解説します。あわせて、法人で民泊事業を営む場合の税務も紹介します。

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民泊の課税関係の解説コラム

民泊により生じる所得は雑所得か?不動産所得か?事業所得か?

国税庁が公表した資料では、住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく民泊について、所得税における所得区分の基本的な考え方が示されています。

それによると、自己が居住する住宅を利用して民泊を行うことで得られる所得は、原則、雑所得に区分されます。

また、不動産所得を得ることを事業としている不動産賃貸業者が契約期間の満了等による貸付終了後、次の賃貸契約が締結されるまでの間、その不動産を利用して一時的に住宅宿泊事業を行うような場合は、不動産所得に含めても差し支えないということが明らかにされました。

加えて、専ら民泊による所得により生計を立てている場合など、民泊による事業が所得税法上の事業として行われていることが明らかな場合には、民泊により得た所得は「事業所得」に該当します。

事業所得と雑所得の判断基準

民泊による所得が事業所得に該当するかどうかは、単に民泊を継続しているという事実だけで決まるものではありません。

事業所得とは、自己の計算と責任において独立して営まれ、営利性・有償性があり、反復継続して行われる事業から生じる所得をいいます。具体的には、民泊の運営規模、営業の継続性・反復性、収益性、設備や人員の状況、事業に費やす労力、収益によって生計を立てているかなどの事情を総合的に考慮して判断します。

一方、自宅の空き部屋を利用して副業的に民泊を行う場合など、事業所得や不動産所得に該当しない民泊収入は、原則として雑所得に区分されます。

なお、令和4年の所得税基本通達35-2の改正では、記帳・帳簿書類の保存状況などを踏まえた取扱いが示されています。収入や経費を記帳し、帳簿書類を保存することは重要ですが、それだけで必ず事業所得に該当するわけではありません。収入が僅少な場合や、営利性が認められない場合などには、個別の事情による判断が必要です。

収入金額300万円という金額も一定の判断に用いられますが、300万円を超えれば必ず事業所得となる、あるいは300万円以下なら必ず雑所得となるものではありません。

青色申告特別控除

民泊による所得が事業所得に該当し、青色申告の承認を受けて一定の要件を満たす場合には、青色申告特別控除などの特典を受けることができます。一方、民泊による所得が雑所得に区分される場合には、青色申告特別控除は適用できません。

令和8年分と令和9年分以後では、青色申告特別控除の金額と適用要件が異なります。

比較表は左右にスクロールできます。

記帳・申告方法など(事業所得を前提) 令和8年分 令和9年分以後
複式簿記・期限内e-Tax申告に加え、所定の電子帳簿保存等の要件を満たす場合 65万円 75万円
複式簿記・期限内e-Tax申告の場合(上記の追加要件を満たさない場合) 65万円 65万円
複式簿記・期限内の書面申告の場合 原則55万円(※1) 10万円
簡易簿記で、前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円以下の場合 10万円 10万円
簡易簿記で、前々年分の事業所得に係る収入金額が1,000万円を超える場合 10万円 対象外

※1 令和8年分については、期限内e-Tax申告を行わない場合でも、一定の電子帳簿保存の要件を満たすことにより、65万円控除を受けられる場合があります。上表は代表的な申告方法を示したものです。

※ 表は、青色申告の承認を受けた個人の事業所得を前提とした概要です。帳簿の作成・保存、貸借対照表等の添付、期限内申告など、各控除額に応じた要件を満たす必要があります。令和9年分以後の75万円控除は、e-Tax申告のみで適用できるわけではありません。

※ 簡易簿記の収入金額要件は「前年」ではなく「前々年」です。不動産所得などには別の取扱いがあります。

雑所得が赤字になった場合

民泊による所得が雑所得に該当する場合、必要経費が収入を上回って赤字になったとしても、その損失を給与所得や事業所得など、他の所得と損益通算することはできません。

民泊事業で発生する必要経費の例

民泊事業で得た所得を計算する際に、必要経費として認められるものとして以下の例が挙げられます。

  1. 住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料
  2. 住宅宿泊管理業者等に支払う管理費用や広告宣伝費
  3. 水道光熱費
  4. 通信費
  5. 非常用照明器具の購入及び設置費用
  6. 宿泊者用の日用品等購入費
  7. 住宅宿泊事業に利用している家屋の減価償却費
  8. 固定資産税
  9. 住宅宿泊事業用資金の借入金利子

このほか、民泊運営のための清掃費やリネンのクリーニング費、火災保険料、賃借物件の家賃なども、必要経費になる場合があります。ただし、家具・設備などの購入費用は、金額や内容によって取得時に全額を経費にできない場合があります。

民泊用に物件を購入した場合の減価償却費

民泊を運営するために建物を購入した場合、その建物の取得費用は、原則として購入した年に全額を必要経費にすることはできません。建物の構造や用途などに応じた耐用年数にわたり、減価償却費として各年分の必要経費に計上します。

なお、土地は減価償却の対象になりません。土地と建物を一括で購入した場合は、それぞれの取得価額を合理的に区分する必要があります。

中古物件を購入した場合には、一定の要件の下で新築物件とは異なる耐用年数を用いることができます。また、リフォーム費用についても、工事内容によって修繕費として処理できるものと、資産に計上して減価償却するものに分かれます。

減価償却費の計算では、建物の取得価額、構造、築年数、民泊の用に供した時期などを確認する必要があります。経費にできるのは民泊業務に対応する部分であり、私生活と共通する費用は合理的な方法で区分します。領収書や請求書などの証憑も保存しておきましょう。

自宅で民泊をしている場合に住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は使えるか?

現在居住している家屋を利用して民泊を行う場合、床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たせば、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受けることができます。

ただし、控除額は原則として、住宅ローン等の年末残高のうち居住用部分の割合に対応する金額を基礎として計算します。実際の適用可否・計算には、その住宅の利用状況や取得時期などによる確認が必要です。

民泊をしている自宅家屋を売却する場合に、居住用財産の3,000万円の特別控除は使えるか?

居住用家屋を利用して民泊を行っており、この家屋を売却する場合には、一定の要件を満たせば、居住用財産の3,000万円の特別控除の適用を受けることができます。

ただし、居住用以外の部分がある場合、原則として、特別控除の対象となるのは居住用部分に対応する譲渡所得に限られます。

民泊による収入は消費税の課税対象になるのか?

民泊において宿泊者から受け取る宿泊料は、ホテルや旅館等と同様に消費税の課税対象になります。

ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合には、免税事業者に該当する可能性があり、この場合には消費税の申告・納税の義務はありません。

なお、インボイス発行事業者として登録している場合などは、課税売上高が1,000万円以下でも消費税の申告・納税が必要になります。

民泊事業を法人化した場合の税金・確定申告はどうなる?

民泊事業の規模拡大や運営物件数の増加に伴い、株式会社や合同会社を設立して民泊事業を運営するケースもあります。個人事業と法人では、所得の計算方法や税金の取扱いが異なります。

法人には、雑所得・事業所得という所得区分がない

個人の場合、民泊による所得は、実態に応じて雑所得、事業所得、不動産所得などに区分されます。特に雑所得に該当する場合、民泊の赤字を給与所得などと損益通算することはできません。

一方、法人の場合には、個人のような所得区分はなく、民泊事業の収益や費用を法人全体の所得計算に含めます。例えば、同一法人で民泊事業と別の事業を営んでいる場合、民泊事業の損失と他事業の利益を合わせて法人の所得を計算できます。別法人の利益と無条件に相殺できるという意味ではありません。

また、青色申告などの一定の要件を満たす場合には、法人の欠損金を原則として10年間繰り越し、翌期以降の所得から控除する制度があります。

役員報酬を支給できる

法人化した場合、経営者自身に役員報酬を支給できます。役員報酬は、定期同額給与などの一定の要件を満たせば法人の損金となり、受け取る個人には給与所得控除が適用されます。

ただし、役員報酬は自由に変更できるものではなく、経営者個人の所得税・住民税や社会保険料も考慮する必要があります。法人化によって必ず税負担が軽減されるわけではありません。

民泊用物件の購入費用や必要経費

法人が民泊用の建物を購入した場合、建物の取得費用は、原則として減価償却により各事業年度の損金に算入します。土地は減価償却の対象になりません。

このほか、仲介手数料、清掃費、管理費、水道光熱費、消耗品費、保険料、借入金利息など、民泊事業に必要な費用も、内容に応じて損金に算入します。

法人化した場合の消費税

法人が宿泊者から受け取る宿泊料も、原則として消費税の課税対象になります。

新たに設立した法人は、基準期間がない設立1期目・2期目について、原則として消費税の納税義務が免除されます。ただし、資本金が1,000万円以上の場合、インボイス発行事業者として登録した場合、特定期間の課税売上高等が一定額を超える場合、一定の支配関係がある場合などには、消費税の申告・納税が必要になることがあります。民泊用建物や設備への大きな投資を予定する場合も、課税事業者の選択等を含め慎重に検討する必要があります。

法人化は税金と維持費用を比較して判断する

法人化によって税負担が軽減される場合もありますが、法人の設立費用、決算・申告費用、法人住民税の均等割、社会保険料などの負担が生じます。

個人で所有している民泊用物件を法人へ移転する場合は、不動産の譲渡に伴う税金や登記費用なども考慮する必要があります。法人化を検討する際には、今後の物件取得計画や事業規模を踏まえ、個人事業を続ける場合と法人化する場合を比較することが重要です。

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本記事は、一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の事案に対する税務・法律上の助言や判断を行うものではありません。

掲載内容につきましては正確性の確保に努めておりますが、その正確性、完全性および最新性を保証するものではありません。今後の税制改正や法令・通達等の変更により、実際の取扱いと異なる場合があります。

具体的な税務上の取扱いにつきましては、最新の法令や国税庁の公表資料等をご確認のうえ、個別に税理士等の専門家へご相談ください。

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